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どこでもドア

子供のころ、僕は「ドラえもん」が大好きだった。
仮面ライダーやウルトラマンも好きだったが、一番好きなのはドラえもんだった。
ドラえもんの道具の中で一番好きなものは、どこでもドアだった。
これがあれば、朝も思い切り寝坊できるし、歩いて学校まで行かずに済む。家に帰るのだって一瞬だ。
早くどこでもドアできないかなーと思いながら、気が付いたら大人、というかおじさんになっていた。

大人になってからも、満員電車で出社する時や、炎天下に打ち合わせのために外出する時に、ときどきどこでもドアのことを思い出した。
こんなとき、どこでもドアがあれば一瞬なのになー…って。

ある時、広告業界に入った僕は、どこでもドアによって広告がどのように変化するのかを考えてみた。
朝、通勤電車にも乗らなくなるのかな?
打ち合わせだって一瞬で移動できるからタクシーも電車も必要ない。
ということは、交通広告ってなくなるのかな?
タクシーだけじゃなくてバスや自家用車も減ってきたら、OOHもなくなるし…

いやまてよ、実用化されたばかりのどこでもドアは、きっととんでもなく高額なはずだ。
とても一般市民が買える金額ではない。
そうか、鉄道会社や航空会社が新たな移動インフラとして導入し、駅や空港に設置するんじゃないか?
そうすれば現在の駅や空港というインフラは大改修が必要だけどスペースとしては活用できる。
通勤客は駅までは歩いてきて、そこから行先別にある程度まとまった人数ごとに転送されるというわけだ。

転送先も個別の会社ではなく、大手町や東京駅といったターミナル駅まで転送され、そこから会社までは徒歩で通勤する。
移動時間こそ短縮されるものの、通勤経路や駅の混雑は今とあんまり変わらないってことになるのかな。
そうなるとどこでもドアも、いわゆるドアのような形状ではなく、電車やエレベーターのような室内空間を持った形になり、
その室内に入ってからしばらくすると次の駅にむけた転送が行われるというわけだ。

ん?
ある空間を経由して移動するということは、そこが広告の媒体になりえるよね。
例えばだけど、そこに新商品の清涼飲料の映像を流すとか。
なんかどこかのテーマパークみたいだな。
映像だけじゃなくて、もうちょっとスペースがあればベンディングマシーンも設置して、その場で購買まで完結させることだってできるし、
サンプリングキャンペーンにすれば、広告から直接サンプリングまで行える。
あれ、結構いいんじゃないの?
なるほど、もしかしたら未来の広告は、そんな風になるのかもしれないな。

ところが現実は違った。

新型コロナウイルスによって、人々は移動をしなくなったのだ。
もちろん、制限が解除された現在は多くの人が通勤しているし、旅行だってしている。
たまには外食だってするし、ショッピングだってしたい。
だけど、少なくとも東京においては、一部企業だけとはいえ、リモートワークによって出社する人数は減ったし、
実際に僕の会社では打ち合わせは、そのほとんどがオンラインになった。
1日中、取引先から取引先へ移動し続けていたワークスタイルが、
リアルでないとできない、もしくはリアルの方がうまくいく仕事の時だけ実移動を行うようになった。

結果、1日にこなせる仕事の量は増え、効率も上がった。
たまに夢中になりすぎて深夜までぶっ続けで働いてしまうという弊害もあるけど、
効率の改善という意味ではすごくいい結果になったと思っている。
どこでもドアという夢のあるテクノロジーではなく、
新型ウイルスという、できれば避けて通りたかったものを克服するためにテクノロジーを使うことで、
なんだか当たり前の結論なんだけど、日本の労働環境が変わり始めるきっかけになったのでは、と思うんです。

おっと、広告の話でしたっけ…
ワクチンや治療薬が登場すれば、リアルに移動する日常が戻ってくるとは思う。
けれど、一度でも効率化を知ってしまった労働者と経営者は、新型ウイルス克服後もオンラインのワークスタイルはある程度残すはず。
結果、鉄道やタクシーの需要はかつてよりは少なくなり、それに代わるものとしてオンラインでの広告需要が増えることになると思う。
最近はOMO(Online Merges with Offline)が流行っていて、アジアの他の国では日本よりもはるかに先を行っていて、
日本残念だなーと思っていたけど、思いもよらないきっかけで、もしかしたら日本の産業構造が変わるかもしれない、と期待しているこの頃です。

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