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【並行書評】『ジョジョの奇妙な冒険』荒木飛呂彦に学ぶ「メタ思考」

世界的に新型コロナウイルスの流行が広がり、日本でも日常の行動が規制され始めた3月。

私も例外なく、自宅内にいる時間が増え可処分時間も増えたこともあり、今まで何かと理由をつけてやってこなかったことをやろうと思い立ちます。

それが、「買ったまま家の本棚で死んでいた(積読していた)本を甦らす(読み返す)こと」でした。

ジョジョ作者・荒木飛呂彦先生が、「死んだ人が生き返る漫画が嫌だった」とおっしゃっていたのを思い出してしまいましたが・・・今回、本コラムで取り上げる書籍は、ほぼ同タイミングに蘇生した2冊になります。

 

それぞれの書籍を書店で手に取った当時の動機は以下です。(本コラムの内容と直接関係はありませんので、飛ばしても大丈夫です!)


  • 『荒木飛呂彦の漫画術』(集英社新書)

「僕自身は、「『ジョジョ』」は王道漫画だ」という自信を持って描き続けてきました」という本の帯の作者の言葉を読んで、違和感を持った。元々著者の作品「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズが好きだった私。「ジョジョな奇妙な冒険」は、王道漫画というより、「格闘漫画×知能戦」の異端のバトル漫画であり、だからこそ根強いファン層がいる人気作だと思ってきました。そんな思いで疑問を解消すべく購入。

  • 『メタ思考トレーニング』(PHPビジネス新書)

新卒1年目のとき、上司から「君はメタ認知が全然できていない!」と指摘をもらう。「メタ認知」という言葉を全く知らなかった当時の私は、その時、検索して言葉の意味を知ったが、納得ができずにことを終えた(純粋想起はできない状態)。数年後、この書籍に出会い、「メタ」というワードに記憶の奥にあった新卒の時に受けた指摘がフラッシュバック(助成想起)。あれから数年後、私は「メタ」的な考えができるようになったか、確認のために購入。


その時の気分で、この2冊を交互に読み始めましたが、それぞれの本を読み進めるにつれて2冊の共通項の多さに気がつきます。

「1人の人間が選んで買ったんだから当たり前だろ!」と真っ当な指摘が聞こえてきそうですが、私にはそれぞれ異なる瞬間と動機で手にとった2冊だったので、とてもラッキーで不思議な経験をしたという思いが強くなり、今回、筆を取らさせていただきました。

前置きがかなり長くなってしまいましたが、もし良かったら、少しだけお付き合いください。

 

はじめに:「メタ思考」とは?

まず「メタ思考」という言葉はあまり馴染みのない言葉かもしれないので簡単に説明すると、『メタ思考トレーニング』では

様々な物事を「一つ上の視点から」考えてみること

とされています。この視点がビジネスシーンや発想力を上げるために重要であるというのが、この本の主旨です。

「なぜメタ思考が大事なのか」という3つの理由は

その① 「何がわからないかわかっている」という「気づき」を与えてくれる
その② 思い込みや思考の癖から脱する
その③ ①と②で得られた気づきや発想の広がりを基にした創造的な発想ができる

とあり、

思い込みや視野の狭さから脱して、意味のない常識や慣習、前例にとらわれることなく、自由に、あるべき姿や理想の社会を実現するための方策を考えたい人のための本書

と、著者の細谷さんは主張しています。

そして、もう一方の著書『荒木飛呂彦の漫画術』の著者・荒木飛呂彦先生が、この「メタ思考」というビジネススキルを、「漫画」という舞台で体現するロールモデルの一人ではないか、というのがこの考察ブログの入り口で、テーマになります。

加えて言うと、先ほど、『荒木飛呂彦の漫画術』の帯のコメント「『ジョジョ』」は王道漫画だ」という自信を持って描き続けてきました」に少し触れましたが、荒木先生は、自身や業界、世間のもつ”王道漫画”のイメージ(思い込み)からメタ思考のアプローチによって意図的に脱し、試行錯誤の末、『ジョジョの奇妙な冒険』という唯一無二で新しい「王道漫画」の作品を世に生み出したのだと、私は想像しています。

『荒木飛呂彦の漫画術』では、荒木先生が王道漫画の描き方の企業秘密を、惜しげもなく事細かに説明しており(帯には「僕にとっては、正直、不利益な本なのです」とありますが・・)、言うなれば「漫画制作の秘伝書」的な濃密さがあり、

広告という分野でコンテンツを作る人の端くれとしては眼から鱗まみれな内容なのですが、今回は著書『メタ思考トレーニング』との共通点というテーマで、2つのポイントに絞って考えていきます。

それが、

Theme①:Why型思考

Theme②:アナロジー思考

です。それぞれ、順番に触れていきます。


Theme①:Why型思考

『メタ思考トレーニング』では、メタ思考をトレーニングするために演習問題が多数掲載されています。

例えば、

・上司から「ドローンについて調べて報告して」と言われたら、次に取るべきアクションは何か?

・お寿司以外の「回転〇〇」を考えよ

・「昔ながらの喫茶店」の競合はどこか?

・「信号機」と「特急の停車駅」の共通点は?

・「経理業務」と「スポーツ審判」の仕事上の共通点は?

・「コピー機」と「エレベーター」の共通点は?

・「タクシー」と「土産物屋」の共通点は?

といったような問題です。

こうした問題を解き、自分の頭で考えていくことで、メタ思考を実戦レベルにまで落としいくことを本著では目標と置いてます。

その考え始めるキッカケとなるツールとして、「Why型思考」が紹介されています。

Why型思考とは、物事をひとつ上の視点から客観視するための身近な合言葉としての「なぜ?」を、日常生活の中で常に意識し、能動的に発想を膨らませるメソッドです。このメソッドを説明するにあたり、「思考回路の癖」のチェックを促します。

先の演習問題「上司から「ドローンについて調べて報告して」と言われたら、次に取るべきアクションは何か?」

という問いに対して、以下の2つの傾向に大きく分けられると作者は言っています。

思考回路①:「ドローンを調べる」という依頼事項を実行するために、それをどうやって具体的に実行するかについてアクションする

Ex.)他国の導入事例をネットで調べる。/試しに安いドローンを自分で購入してみる。など

思考回路②:「なぜドローンについて調べる必要があるのか?」について疑問を呈し、依頼のそもそもの目的を確認するためのアクションをする

Ex.)「その調査結果を何に使うか」を依頼主に確認してみる。/調査目的が何かの仮説を立てる。など

①のタイプは、思考回路が、具体性、実行重視のHow型思考、②のタイプは、目的重視のWhy型思考 になり、メタ思考に近いのは②Why型思考になります。

このように問題解決におけるメタ思考は、いきなり問題を解き始めるのではなく、まず「問題そのものについて」考えることの重要性を主張します。要するに、与えられた問題を疑わずに「それありき」と考えてアクションを起こし始めるか、「そもそもこの問題でよいのか?」上位目的を考えて、疑ってかかるのかの違いです。

このメタ思考のメソッド「Why型思考」が『ジョジョの奇妙な冒険』の作者・荒木飛呂彦先生にも、当たり前のように備わっている習慣が『荒木飛呂彦の漫画術』にあったので紹介します。

漫画のストーリーを考える上で、いつも自分の周りで見聞きしたことで「おもしろいな」と思ったことをメモしておき、アイディアノートにまとめる習慣を続けているそうです。そのメモする視点が大きく3つに分かれていて、

視点①:自分がよいと思ったこと

視点②:自分とは違う意見や疑問に思う出来事、理解できない人

視点③:怖い出来事や笑える出来事、トラウマになりそうな出来事

それぞれの思った瞬間にメモをしておき、後で「なぜ、そう思ったのか」「なぜ、この人はそんな風に思うんだろう」「なぜ怖いと思ったのか」と理由を考え、分析するそうです。そうすることで新たな視点が得られ、自分の世界が広がり、そこから新しいアイディアにつながっていく。

どんなことにも興味を持って、疑問を感じて、その裏側にある背景を想像してみることで、奥深く、おもしろいストーリーができるという思考習慣が、まさにジョジョの奇妙なストーリーを支えているんだと思います。

アイデア出しに追われて、このステップを軽んじて、ついつい捻り出してしまうことがある私には非常に響きました。


Theme②:アナロジー思考

続いてが、『メタ思考トレーニング』のなかで、「Why型思考」とメタ思考のもう一つの軸としてある「アナロジー思考」についてです。

一言で表現すれば、アナロジーとは類推、つまり「類似のものから推論する」こと。似ているものから「借りてくる」考え方です。

似たような言葉に「パクリ」がありますが、アナロジーとパクリの違いについては以下です。

スクリーンショット 2020-11-10 11.11.02

最も端的な違いが、類似点の抽象度の違いで、パクリは抽象度の低い、つまり具体的なレベルでの真似です。具体的なものとは直接的に目に見えるものであり、形に表れているものと作者はいいます。

逆にアナロジーを用いたアイディアは、目に見えない類似性や、もの同士の「関係性」や「構造」(関係性が複雑になったもの)のレベルで類似性を用いることになります。

アナロジー思考の基本にあるのは抽象化の考え方で、つまり、複数の具体的な事象に高次の共通点を見つけて一般化することです。

そこで見つけた共通点を基にして一見全く異なるように見えるものをつなげることで新しい発想を生み出すことができるようになります。

ここでいう「高次の」というのが今回の「メタ」の視点になり、「アナロジー思考」とは、「Why型思考」などを用いて一度抽象化してから再度具現化することで「抽象度の高い真似」を実現することと紹介してます。

極論、アイディアの豊富さというのは、いかに新しいアイディアを異なる世界から借りてくるかに大きく依存していると言います。

日々、広告業界の中の端くれとして、アイデアの質をあげるためにアイディアを出す量を増やすことが重要である因果応報の中で、この内容を知れただけでも、この本を買った価値があったなと、思ったほど、目から鱗でした。

(コラムの都合上、かなり省略して説明してしまったので、詳細はぜひ書籍を読んでみてください。)

 

このメタ思考のもうひと軸のメソッド「アナロジー思考」が窺える荒木飛呂彦先生の習慣を書いたエピソードがあります。

「ヒット作を分析する習慣」のところです。

漫画に限らず、小説を読んだり映画を見たりするときに、ただ「おもしろいな」と思うのではなく、「なぜおもしろいのか」ということを、コンテンツの「基本四大構造(テーマ・キャラクター・ストーリー・世界観)」の図式と照らし合わせながら探っていくようです。

世の中でヒットしている作品はもちろん、それほどいいと思わないのに、なぜ世間の評価が高いのか、と疑問に感じる作品に対しても、この抽象化するアプローチを意識しており、こうした分析の習慣がつけば、どうすれば多くの人に受け入れられる作品を描けるようになるか、次第にわかってくるようになるそうです。

荒木先生は、この日々の分析を欠かさず続け、ヒット作を生み出し続けています。

その他に、「憧れの漫画家の絵は模写以上を目指せ」の章で、

スタートとしては憧れの漫画家の作品を模写してもいいが、プロの漫画家なら「やっぱり上手いなあ、いいなあ」とそこで留まるのではなく、「この骨格はしっかりしているな」「このキャラクターは、こうやってシンボル化しているのか」「どんなことを目的にして描いているんだろう」という視点ですれば、理解も深まり、繰り返すうちに、オリジナリティも絵ににじみ出てくると言ってます。

こうしたことを突破口に、単なる真似ではない、(アナロジー的に)自分自身の絵が発展していくアドバイスがありました。

まさに、模写一つとっても、Why型思考で分析をしながら、アナロジー思考で自身のオリジナリティを研磨する姿勢の重要性という点でかなり共通点が分かると思います。


そして、このコラムも、裏テーマとして(言ってしまったら表ですが・・・)、この「アナロジー思考」を活用すべく、2冊の書籍の類似性を模索し、考察を進めておりました。なかなか、うまく抽象化ができず、書籍の内容をそのまま具体で比較しただけで終わりそうですが。。

最後に、

このコラムというアウトプットに留まらず、また、2冊の書籍の実証実験を超えて、

この2冊から得られた自分なりの考えをこれからも熟成していければなと思ってます。

読んでいただき、ありがとうございました。

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